二回目の窓の話は、方位(方角)と日射の関係についてご説明したいと思います。
夏と冬では窓に求められる性能は逆と言っていいほど異なります。
※断熱性能はどちらも良い方がいいですけどね
夏は出来るだけ太陽熱を入れたくありませんし、
冬には太陽熱を取り込んで家の中を暖かく、明るい空間にしたいです。
要求の異なる夏と冬でいかにバランスよく窓を設置するのかがポイントとなります。
太陽の日射の熱量の大きさを調べてみました。
窓1㎡当りの数値は以下の形になります。
日射量 | ||
---|---|---|
夏至 | 南面 窓1㎡ | 200W |
東西面 窓1㎡ | 600W | |
冬至 | 南面 窓1㎡ | 570W |
東西面 窓1㎡ | 250W |
一般的な掃き出し窓が幅1.6m×高さ2.0mとして約3.2㎡ですので、
全ての熱量が室内に入るわけでなくガラスの種類によって50%入るとすると、
冬の場合、南の掃き出し窓から入る熱量は概算で、
570W×3.2㎡×50% 912W
一般的な電気ストーブが1000W程度ですので晴れた日の昼間であれば、
電気ストーブと同程度の効果が得られます。
反対に夏の場合には、東西面に同じ位の窓があるとすれば、
電気ストーブを付けながら冷房しているようなものなのです。
ご存じのように、夏は日照時間が長く正午の太陽高度が高い為、暑く、
冬は日照時間が短く正午の太陽高度が低い為、寒いです。
私たちが住む福井県大野市において夏至と冬至の太陽の日射角度は、
夏至 6/21 12:00 77.4° 14:00 60.4°
冬至 12/21 12:00 30.6° 14:00 23.4°
となります。
すなわち、南側に付ける窓には夏は日差しが入りにくく、
冬は日差しが入りやすくなるので、窓を大きくするメリットが高くなります。
また、昔からある土縁を南側に付けて夏の日差しを遮ったり、
南側の吹抜けから冬の日射を取り込んだりすることは、
電気などのエネルギーを使わない温熱対策として非常に有効と言えます。
東と西面は年間を通して太陽高度が変わらないため、
夏には家の中に入りすぎてしまいがちになり夏の冷房負荷を上げてしまうことになります。
隣の家が近接している都市部等では、天窓(トップライト)が一般的な窓と比べ、
3倍程度の日射量となるので使い方によっては有効なのですが、
大野市の積雪を考えるとあまりお勧めしていません。
Low-Eガラスをご存じでしょうか?
Low-Eとは放射熱を低減する働きを持った薄い金属の膜でガラス面にコーティングして利用します。
Low-Eガラスには日射遮蔽型と日射取得型があり
複層ガラスの屋外側の内側にコーティングしたものが日射遮熱型と呼び、日射熱を低減します。
これは夏の日射対策用のガラスと言えます
屋内側の内側にコーティングしたものを日射取得型と呼び、こちらは日差しを採り入れ冷気や暖気を逃しにくくします。
こちらは冬の断熱対策用のガラスとなります。
日射を遮蔽するのか取得するのかの使い分けは、方位で行います。
冬に日射量が増える南面は窓を大きくして日射取得型を使い、
一年中日射量の多い東と西面は窓を小さくして日射遮蔽型を使います。
北面の窓は明るさと風通しに有効なため、
意外と窓面積が増える傾向にあり日射遮蔽利用をおすすめしています。
夏はとにかく遮熱が大切で、窓の性能だけに頼らないで、すだれや外付けのブラインド等が有効になります。
東、西面には通風を考慮する窓以外は出来るだけ窓を付けないほうがベターです。
一方、冬の南側の窓から入る日射は自然の暖房機と考えられます。
ある程度高い断熱性能を確保したうえで、
LDKの床面積の約20%程度の窓の大きさを確保することが理想的と言われています。
方位と窓の取付位置や高さ、周辺住居との位置関係から、
日当たりのシュミレーションを行い、効率のよい自然暖房を行う設計を推奨いたします。
今回は窓の方位と日射の関係に絞って話ししました。
次回は引き続き窓の話 風通しについての予定です。