わが国の住宅ストックは6000万戸を超え増加しており、空き家率も増加しています
しかしながら既存住宅流通のシェアは欧米諸国と比べ1/5程度と非常に低い水準にあります。
H28年6月宅建業法の改正により『既存建物の取引に係る情報提供の充実に関する措置』が
講じられ平成30年4月1日から施工されました。
宅建業者は既存建物の売買などの媒介の契約をしたときは、
依頼者の意向に応じ、建物状況調査の実施者(一定の講習を受けた建築士等)をあっせんすることになりました。
A.建物状況調査(インスペクション)
改正宅建業法による建物状況調査(インスペクション)は
専門的な知見を有する者が、建物の基礎、外壁等に生じているひび割れや雨漏り等の劣化事象
及び、不具合事象の状況を目視、計測等により調査するもの とされ
戸建住宅の場合、構造耐力上主要な部分と 雨水の侵入を防止する部分が調査対象となります。
調査対象部位
調査基準 | 部位 | 目視 | 計測 | 操作 |
基礎 | 〇 | 〇 | ||
土台・床組 | 〇 | 〇 | ||
柱及び梁 | 〇 | 〇 | ||
外壁及び軒裏 | 〇 | 〇 | ||
バルコニー | 〇 | 〇 | ||
構造 | 内壁 | 〇 | 〇 | |
天井 | 〇 | |||
小屋組 | 〇 | 〇 | ||
蟻害・腐朽等 | 〇 | |||
鉄筋探査 | 〇 | |||
コンクリート圧縮強度 | 〇 | |||
外壁 | 〇 | 〇 | ||
軒裏 | 〇 | |||
バルコニー | 〇 | |||
雨水 | 内壁 | 〇 | ||
天井 | 〇 | |||
小屋組み | 〇 | |||
屋根 | 〇 | |||
その他 | 耐震性に関する書類の確認 | |||
調査時の状況 |
B.調査の程度
建物状況調査は、原則として非破壊で行います
足場の設置等が必要となる調査や、移動が困難な家具等により隠蔽されている部分や
点検口がなく調査出来ない部分についての調査は要しないとされています。
耐震性については対象住宅が新耐震基準に適合しているかを確認する。
耐震基準の確認に用いる書類
確認済証・検査済証・確認台帳記載照明
新築時の建設住宅性能評価書・住宅瑕疵担保保険の付保証明書
既存住宅に係る建設住宅性能評価書
既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
耐震基準適合証明書・住宅耐震改修証明書・耐震診断の結果報告書
固定資産税減額証明書・構造計算書
調査に使用する一般的な道具
クリップボード・コンベックス・カメラ・自撮り棒・懐中電灯
クラックスケール・ピアノ線・下げ振り・ヘルメット・ドライバー
あれば便利な道具
双眼鏡・打診棒・レベル・レーザー距離計・レーザー水準器・脚立・鉄筋探査機
C.調査結果の活用
宅地建物の取引に係る紛争を防止し、買主が十分理解して契約を締結する機会を与えるため
既存住宅において以下の2点が追加され、平成30年4月から宅建士が
書類を交付し説明することが義務付けられています。
義務付けられた2点
1.既存住宅状況調査の有無、及び調査を実施している場合はその結果の概要
2.設計図書、点検記録等建物の建築及び維持保全の状況に関する書類保存の状況