今回は「天井クロスの貼り替え現場」にお邪魔させていただきました。
冬の間に積もった雪の重みで屋根の垂木が折れてしまい、2階のお部屋に雨漏りが発生してしまったことがきっかけでした。


大工さんによる丁寧な垂木直し工事と天井の張り替え工事が無事に終わり、いよいよ仕上げとなるクロス職人さんの登場です!


普段はなかなか見ることの出来ないプロの職人技をたっぷりレポートします!
仕上がりを左右する「パテ処理」って?
クロスを貼る際、まず最初に行うのが「パテ打ち」という作業です。
「パテ」とは、天井や壁の凸凹を埋めて平らにする材料のことです。
下地にはボードとボードの間の目地(つなぎ目)やビスの頭など、段差や隙間があります。
もしそのままクロスを貼ってしまうと、下地とクロスの間に気泡が入ってしまったり、後からひび割れが発生したりして、綺麗にクロスを貼ることができません。
そこで、この「パテ」を使って目地をしっかりと埋め、天井一面を平らに整えていくのです。
実はこのパテ処理が、仕上がりを美しくするための一番重要な作業と言えます!
パテ打ちは性質の異なる「下塗り用パテ」と「上塗り用パテ」の2回に分けて塗るのが鉄則だそうです。
それぞれの特徴について教えてもらいました。
「下塗り用」と「上塗り用」パテの特徴まとめ
①ガッツリ固める「下塗り用パテ」
石膏ボードの目地やビスのくぼみを埋めるためのパテです。
下塗り用のパテは粒子が粗くて硬く、乾いた後に縮み(痩せ)が少ないのが特徴です。
段差をガッツリ深く埋める時に使用します。乾きが早いのも特徴です。
②クロスの接着に優れている「上塗り用パテ」
下塗り用パテである程度平らにした部分をさらにならすパテです。
上塗り用パテは粒子が細かくて伸びが良く、クロスの糊が付きやすいのが特徴です。
下塗りだけでは消しきれないわずかな段差やざらつきを無くし、ツルツルに仕上げる役割です。
職人の知恵!パテ作りの裏技
クロス職人さんがパテを作っているところです。
ベースとなるパテ粉にスポンジに浸みこませた水を少しずつ足しながら練って粘土状にしていくのですが、水を入れる前になにやら白い粉を混ぜています。気になって聞いてみると、実はこれ、『硬化促進剤』とのこと!パテ粉には元々「60分」「90分」「120分」など、乾くスピードごとに色々な種類の粉があるのだそう。ただ、この硬化促進剤を混ぜることで乾くスピードが格段に上がるそうです。



現場に何種類もの粉を持ち歩くより、1種類とこの促進剤さえあれば様々なな現場に対応できるという、長年の経験から生まれた職人さんの素晴らしい知恵でした。
1秒も無駄にしない!見事な現場スケジュール
【工程①】石膏ボードに下塗り用パテ
まずは新しく張り替えた石膏ボードの目地(つなぎ目)やビス頭に下塗り用パテを塗っていきます。手際よく凸凹を平らにしていきます。

【工程②】残りのクロスを剥がす
下塗りパテが乾くまでの時間を活かして残りのクロスを剥がしていきます。皮スキと呼ばれる道具を使って少しずつ剥がします。
実はクロスは「2層構造」になっていて、表面の柄の入ったビニール面と下地の裏紙の2層になっています。
剥がす時はこの表面のビニール面だけが綺麗に剥がれ、裏紙が天井に残るようになっています。
この残った裏紙が次の新しいクロスの土台になるのです。


ただ、クロスの特徴やお部屋の環境によっては綺麗に剥がれないこともあるようです。
例えば直射日光で西日が当たる場所のクロスは、経年劣化で乾燥しきっていてミリ単位でボロボロと折れてしまうことも・・・
そうなると剥がす作業だけで半日かかるケースもあるそうで、今日みたいに綺麗に剥がれてくれるとホッとするよ。と職人さんも笑顔でした。
【工程③】上塗り用パテ作り
クロスを剥がし終わると、上塗り用パテ作りに入ります。
ベースとなる「パテ粉」に硬化促進剤の粉を混ぜ、スポンジに浸みこませた水を少しずつ足しながら手際よく練っていきます。
水の量や硬さの微調整は、経験が生む「職人の勘」そのものでした。


【工程④】上塗り用パテを塗り下地完成
粘土状になったパテを天井に塗っていく作業です。
先ほど下塗り用パテを塗った部分、クロスを剥がして見えた段差やビスの頭など、職人さんが見極めて均一に塗っていきます。下塗り用パテと比べて色は少し黄色みがかっています。


一見すると、パテをさっと塗っていて「意外と簡単かも?」と思いますが、実際は繊細な技術が必要な作業です。
ずっと上を向きっぱなしの体勢で、パテの厚みを一定にしなければいけません。パテによるわずかな段差も仕上がりに影響します。厚すぎても少なすぎても美しい仕上がりにはなりません。職人さんは絶妙な力加減でコントロールしています。何気ない動きの一つひとつに、長年積み重ねてきた職人さんの経験と技術が詰まっていることを実感しました。
パテが完全に乾いたら、サンドペーパーで表面を丁寧に研磨し、凸凹を無くして平らに整えていきます。
まるで魔法✨圧巻のクロス貼り
下地が整ったら、いよいよ新しいクロスを貼る工程です!
お部屋のサイズに合わせてカットし、機械で糊付けされたクロスが現場に運び込まれます。
糊同士がくっつかないよう養生テープで保護する工夫もされていました。

準備が整うと、部屋の一番奥から貼っていきます。
位置を確認すると、ためらうことなく一気に貼り進める職人さん。その手際の良さに思わず見入ってしまいました。
途中でシワや空気が入った部分は、一度クロスを浮かせて貼り直し、ハケを使って空気を押し出しながら綺麗に密着させていきます。


天井という作業しづらい場所にも関わらず、迷いのない動きでスルスルと仕上げていく姿はまさに職人技!
簡単そうに見えますが、均等に貼る力加減や位置合わせなど、長年の経験があるからこそできる作業なのです。

クロスはあらかじめ、部屋の少し大きめにカット調整してあるので、
余った部分はヘラを当てながらカッターで真っすぐ切り落とします。
壁と天井の取り合い部分にはコーキング剤を均一に施工します。
つなぎ目が分からないほど美しい仕上がりになります。




2枚目以降は前のクロスと少し重ねて貼り、重なった部分を木製定規とカッターで同時にカットします。
その際、力を加えすぎると天井の下地まで切ってしまい、クロスが開いてきてしまうので注意しながらカットします。
重なり部分のクロスや養生テープなど不要な部分を取り除いたら、2枚のクロスがぴったり合わさります。
最後にローラーでつなぎ目をしっかり押さえてなじませれば、どこがつなぎ目か分からないほど自然で美しい仕上がりになりました。



壁やクロスについた糊は時間がたつと茶色く変色してしまうので、はみ出した糊は丁寧に拭き取って完成になります。

職人さんに素朴な疑問をぶつけてみました
撮影の間、ずっと上を向いていたため首が痛くなってしまった私。
足場の上で、ずっと腕と首をあげたまま作業している職人さんに思わず聞いてみました。
私:「やっぱりクロスの場所で一番大変なのは天井ですか?」
職人さん:「まぁ、体勢は悪いからね。でもそれも慣れれば平気になるよ。最初の2,3年は首や肩が痛かったけどね。それに天井は大体きれいな四角形だから、カットする箇所は少ない。壁みたいに障害物に合わせて細かくカットすることも少ないから、実はそこまで大変じゃないんだよ」
なるほど・・・!大変な体勢は慣れに変え、構造のシンプルさを見出す。
これも長年の経験があるからこそ言える、格好いい言葉だなと思いました。
現場へ行くたびに感じますが、どの職人さんもその道のスペシャリストです。
経験と技術で作業に迷いがなく、手際の良さと美しい仕上がりに圧倒されます。
毎回現場へ足を運ぶ度に、新しい発見と学びがあり、職人さんの仕事の奥深さを実感しています。
【ビフォーアフター】明るく生まれ変わったお部屋
クロスを前面に貼り終えたあとは、新しい照明を取り付けます。
今回は、元々の蛍光灯からLED照明へ交換しました。
真新しいクロスに照明が反射して、お部屋の印象が一気に明るくなりました。
お客様からも「綺麗にしてもらって嬉しいわ」と大変喜んでいただき、私も嬉しくなりました。
今回、クロスを剥がすところから完成までの一連の工程を間近で見る事ができました。
普段何気なく目にしているクロスですが、その裏には、下地作りから仕上げまで一つひとつの工程に職人さんの知恵と技術が詰まっていることを知りました。
今後も、普段なかなか見ることのできない家づくりの裏側をお届けしていきたいと思います。


